師範学校規程(抄)(一八・三・八 文部省令)  [意訳付

  第一章 総則
第一条 師範学校ニ於テハ教育ニ関スル勅語ノ旨趣ヲ奉体シ師範教育令第一条ノ本旨ニ基キ左ノ事項ニ留意シテ生徒ヲ教育スベシ
一 国体ノ本義ヲ闡明シ皇国ノ使命ヲ自覚セシメ皇国ノ道ノ先達タルノ修練ヲ積ミ至誠尽忠ノ精神ニ徹セシムベシ
二 教学ノ本義ヲ体得セシメ身ヲ教職ニ挺シテ国本ニ培ヒ皇謨ヲ翼賛シ奉ルノ信念ヲ涵養スべシ
三 学行ヲ一体トシテ心身ヲ修練セシメ国民錬成ノ重キニ任ズルノ徳操識見ヲ涵養シ師表タルノ資質ヲ練成スべシ
四 挙校一体修文練武ニ力ムルノ風ヲ振作シ闊達ニシテ質実剛健ヲ尚ビ協同ト勤労トヲ重ソズルノ気風ヲ作興スべシ
五 教育ヲシテ特ニ国民生活ノ実際ニ適切ナラシムルト共ニ実践体験ニ依ル学習ヲ基礎トシテ自発研究ノ態度ヲ育成スべシ
六 教育内容ノ全体的統一ニ意ヲ用ヒ学校ノ全施設ヲ挙ゲテ人物錬成ノ一途ニ帰セシムベシ
第二条 本科ノ教科ハ男子部ニ在リテハ国民科、教育科、理数科、実業課、体錬課、芸能課及外国語科トシ女子ニ在リテハ国民科、教育課、理数科、家政科、体錬科、芸能科及外国語科トス
第三条 本科ノ教科ハ之ヲ分チテ基本教科及選修教科トス
 〔下略〕
第四条−第十一条〔略〕
第十二条 教育実習ハ教育実践ヲ通ジテ国民錬成ノ真義ト其ノ方法トヲ習得セシメ師道ヲ闡明シ挺身奉公ノ信念ニ培ヒ教育者タルノ資質ヲ錬成スルヲ以テ要旨トス
第十三条 予科ノ教科ハ男子部ニ在リテハ国民科、理数科、体錬科、芸能科及外国語科トシ女子部ニ在リテハ国民科、理数科、家政科、体錬科、芸能科及外国語科トス
 〔下略〕
第十四条−第二十三条〔略〕
第二十四条 師範学校ノ教科用図書ハ文部省ニ於テ著作権ヲ有スルモノタルべシ
2 特別ノ必要アルトキハ学校長ニ於テ文部大臣ノ認可ヲ受ケ前項ニ規定スル教科用図書ヲ使用スルコトヲ得
第二十五条−第二十八条〔略〕
 第二章 編 制
第二十九条−第三十条〔略〕
 第三章 入学、退学及懲戒
第三十一条−第四十三条〔略〕
 第四章 学 資
第四十四条−第四十六条〔略〕
 第五章 服務及就職
第四十七条−第五十五条〔略〕
 第六章 研究科
第五十六条−第六十三条〔略〕
 第七章 付属国民学校及付属幼稚園
第六十四条−第六十七条〔略〕
 第八章 雑 則
第六十八条〔略〕
 付 則
第六十九条 本令ハ昭和十八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第七十条−八七条〔略〕


[意訳

    第一章 総則

第一条 師範学校においては「教育勅語」の趣旨をよく理解しそして実践し、「師範教育令」第一条の本来の趣旨にもとづいて、左の事項に留意して生徒を教育すべきである。

一 「国体の本義」(※1)とは何かを明らかにして、天皇国家の使命を自覚させ、天皇国家の進む道の指導者として修練を積み、真心をもって忠義を尽くす精神に徹しなければならない。

二 「教学の本義」(※2)を理解させ実践させる身を教職に捧げ、天皇国家の基礎を培い天皇国家の計画を助け奉ることの信念が心の底から滲み出てくるように育てなければならない。

三 「学行を一体」させて心身を磨き、国民を鍛え育てる重い任務を全うするために、堅いみさおと見識を積み、人の手本であることの資質を鍛えなければならない。

四 学校が一体となって学芸を修め武術を磨く校風を盛り上げ、おおらかで質実剛健を尊び、協同と勤労とを重んじる気風を盛んにしなければならない。

五 教育が特に国民の日常生活に効果あるようにすると共に実践体験による学習を基礎として自発的な研究態度を育成しなければならない。

六 教育内容の全体的統一を考え、学校の全施設をもって人物を鍛え育てることに専念しなければならない。

第二条 本科の教科は男子部では、国民科、教育科、理数科、実業科、体錬科、芸能科、及び外国語科とし、女子部では、国民科、教育科、理数科、家政科、体錬科、芸能科および国語科とする

第三条 本科の教科はこれを分けて基本教科と選択教科とする。
 〔下略〕

第四条−第十一条〔略〕

第十二条 教育実習は、教育実践を通し国民を鍛え育てる真の意味とその方法とを習得させ、人の師としてのとるべき道を明らかにし、身を犠牲にし天皇国家に奉仕する信念によって支えられた教育者としての資質を鍛え作り上げることを主な趣旨とする。
第十三条 予科の教科は、男子部では国民科、理数科、体錬科、芸能科および外国語とし、女子部では国民科、理数科、家政科、体錬科、芸能科および国語科とする。
 〔下略〕

第十四条−第二十三条〔略〕

第二十四条 師範学校の教科用図書は文部省が著作権を有するものでなければならない。
2 特別に必要な時は学校長が文部大臣の認可を受け前項に規定する教科用図書を使用することができる。

第二十五条−第二十八条〔略〕
 第二章 編制
第二十九条−第三十条〔略〕
 第三章 入学、退学及懲戒
第三十一条−第四十三条〔略〕
 第四章 学資
第四十四条−第四十六条〔略〕
 第五章 服務及就職
第四十七条−第五十五条〔略〕
 第六章 研究科
第五十六条−第六十三条〔略〕
 第七章 付属国民学校及付属幼稚園
第六十四条−第六十七条〔略〕
 第八章 雑則
第六十八条〔略〕

 付則

第六十九条 本令は昭和十八年四月一日より施行する。

第七十条−八七条〔略〕


[訳者注]

※1「国体の本義」…1937年(昭和12)文部省が全国の学校に配った公げの文書である。天皇が日本の主であり、国民は天皇の「赤子(せきし)」とされ、国民が天皇のために絶対服従をさせるための学校現場での教師の心得を説いている。

 国民が天皇に忠誠を尽くすのは、日本国が出来た時からの当然のことである、という考えを「古事記」や「日本書紀」の神話の中の「アマテラスオオミカミ」から始まる日本建国の神話をもとに説き起こし、国民に押しつけ、それが学校教育の場で徹底されるように解説している。

 全体としては、近代思想のあれこれを取り入れることを認めながら、それはあくまで天皇国家をより強力にするためでなければならない、とする。その結果、教育そのものが、人格の完成や自我の実現という近代教育思想とは全くかけ離れたものになっていた。

※2「教学の本義」…教育と学問の本来の意義ということだが、これも、「国体の本義」で説かれているもので、天皇国家における「あらゆる学問は、その究極を国体に見出す」として、学問研究の目的を天皇国家のためという所に置く。一方、天皇国家における「教育も、亦一に国体に基づき、国体の顕現を中心」とし、天照大神以来の天皇一家の道にその根源を求めるべきであるとする。つまり、学問も教育もすべてが天皇国家への忠誠という道に結びついている。したがって「個人主義教育学の唱へる自我の実現、人格の完成」というものは、単なる「個人の発展や完成を目的」としているから、天皇国家の教育とは「全くその本質を異にする」として排除された。

※3「学行を一体」…これも、「国体の本義」に説かれているもので、教育は知識と実行とを一にするものでなければならない、としている。しかし、それも「知行合一してこそ天皇国家の道を行うことができる。」というように、天皇国家への忠誠を目的として位置づけられていた。

 「諸々の知識の体系は実践によって初めて具体的なものとなり、理論的知識の根底には、常に国体に連なる深い信念とこれによる実践とがなければならぬ。」として、知識もすべて万世一系の天皇国家にその忠義を尽くす行動によって確かなものとなる、という論法である。そのことは逆に、科学的根拠に基づく知識を排除し、忠義に合致した知識のみを教育していくということになり、その本質を示していて興味深い。戦前の学校では、「なぜ?」が認められなかったということが理解できるのである。もともと、天皇国家の起源の根拠を神話から引き出していることからも、ここで述べられている知識の狭小性と非科学性は明らかであろう。

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