「鹿山文書」

      昭和二十年六月十五日
                                         久米島部隊指揮官
具志川村
仲里村 村長 ・警防団長殿
      達
一、敵ノ一昨十三日夜間ニ於ケル具志川村北原部民羅致事件ハ其ノ後判明セル處ニ依レバ青、壮、老年ノ男子各一名ノ被害者ヲ出シ居レリ
敵ノ目的カ那辺ニ在ルカ窺ハルヽモノナリ然レ共右三名カ目的ニ叶ヘル者ナルカ否カ當方トシテハ疑問トスヘキ点アルニ付テハ敵カ再度此ノ種計畫ヲ実行スルヤモ知レズ ト考ヘラルヽニ付全島海岸ニ対スル嚴重ナル監視ノ必要ヲ痛切ニ感ズルト共ニ先日ノ 如キ監視並報告ニ対スル失敗カ繰返サヾル様切望スル次第ナリ

二、右羅致者ニ対スル敵ノ取扱ハ圖リ知レザルモ當面ノ関係事項トシテハ謀略的見地ヨリスル條件付送還放免、戦略的利用トシテ上陸作戦時ノ道案内並牒者トサルヽ事ナリ
故ニ右被害者カ本島の如何ナル場所ニ上陸帰島スル共其ノ家族ハ勿論一般部落民トノ会話面接ノ絶対厳禁直ニ軍當局ニ報告連行ノコトニ取扱フコト

三、敵ハ謀略宣傳ヲ開始スル算大ナリ
  依ッテ敵ガ飛行機其ノ他ヨリスル宣傳「ビラ」撒布ノ場合ハ早急ニ之ヲ収拾取纏メ軍 當局ニ送付スルコト
  妄ニ之ヲ拾得私有シ居ル者ハ敵側「スパイ」ト見做シ銃殺ス
四、前記各號ノ報告ニ関シ陸軍部隊陣地ニ近キ所ニ在リテハ陸軍部隊ニ報告スルコトヲ得
五、第一號第二號ニ関シ其ノ主旨ニ相反シタル場合関係者並責任者ハ軍則ニ照シ厳重處罰 ス
                                                                                                                        (終)

[意訳]
1敵が一昨日13日に拉致した住民は、青年、壮年、老人の3名とわかった。敵がどのような目的で拉致したのか今は明確ではないが、再び、同じことがあり得るので、海岸一帯の警備を強化すると共にこのよう失敗を二度と侵してはならない。
2敵が、この三名をどうするのか不明だが、考えられることは、スパイを条件に島へ帰すのか、または敵の道案内として連れてくるのか、どちらかであろう。
したがって、三名が島へ帰ってきたら、家族はもちろん、部落の者にも一切接触させてはならない。直接軍当局に引き渡すことである。
3敵はこれから、,宣伝を強化するであろうから、敵の宣伝にのってはならない。敵の宣伝ビラ等が見つかれば、すぐさま軍に届けることである。もし、ビラ等を持っている者がおればただちにスパイとして銃殺する。
4以上のことの報告は近くの軍部隊にすること。
5前記1と2に関して違反したときは、関係者と責任者は軍規に照らして厳重に処罰する。

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